manipuri 語れるスカーフ vol.2 スカーフの鮮やかな色彩を司る、捺染職人の手腕

柄のこと、色のこと、仕立てのこと。細部まで並々ならぬこだわりを持って作られたものには、誰かと話したくなるストーリーがあります。「manipuri 語れるスカーフ」では、作り手の技と想いが込められた、名品スカーフができるまでを紐解きます。


Step1_表現したい色の数だけ版を作り、染料を調合

「manipuri」のスカーフは作り手がそれぞれのパートを仕上げ、リレーのバトンを渡すように、人から人へと受け継ぐことで完成します。デザイナーの仲山さんが手がけたデザイン画は染色工場へと渡り、捺染用の「版」へと変換されます。

「『manipuri』のスカーフはすべて、熟練の職人が1版ずつ手作業で丁寧に染め上げる手捺染(ハンドプリント)で作られています。そのため、染色工程に入る前に、まずは版作りに取りかかります。手捺染では1色に対して1枚の版を使用するため、1枚のスカーフに10色使用しているとしたら、10枚の版を起こす必要があります」(manipuri 生産担当・飯田さん)

製版と同時に「調色」と呼ばれる染料の調合も行います。複数の粉体塗料を掛け合わせ、デザイナーがイメージする理想の色を捺染職人が追求し、作り上げます。

「染料の調合は、手捺染の特徴である豊かな発色を左右する重要な工程。指定された色を再現するため、職人は数々の色を見てきた経験からの感覚を頼りに、ミリグラム単位で調整を繰り返し、染料を調合します。その後、染料と糊剤を混ぜ合わせ、捺染に使用する『色糊』を作成。適度な硬さに調整することで輪郭がにじまず、繊細な柄に仕上がります」(飯田さん)

10色のスカーフの場合、同じ作業を10回繰り返すことに。さらに、「manipuri」では1つのデザインにおいて3〜4つのカラーバリエーションで展開することも多く、その作業から職人の根気と技術力がうかがえます。

熟練の職人と共に作り上げる、唯一無二の色彩

1859(安政6)年に横浜が開港されて以来、盛んになった生糸の輸出の流れの中で生まれたシルクスカーフ。「manipuri」のスカーフは、横浜にルーツを持つ歴史ある国内の染色工場で1枚1枚丁寧に作られています。

「手捺染は、熟練の職人の勘所をとても必要とする染色方法です。調色1つとってみても、扱う生地や季節によって色の出方が変わるため、綿密なやりとりをしつつも、最終的には、確かな知識と技術、豊かな経験を持った職人の“目”に託して初めて、理想の色に出会えます。職人が工夫を凝らし、時間と手間をかけて1色1色作っていくからこそ、唯一無二の色彩を生み出すことができるのです」(飯田さん)

Step2_1枚1枚丁寧に、1色ずつ色を重ねていく

生地が張られた捺染台に版を固定して、いよいよ手捺染の工程へ。

「捺染台の縦幅はおおよそ120cmくらいで、人の手が届く範囲になっています。また、職人の手で染めるため、均等に力がかかるように台に傾斜をつけているのも特徴です。下から染料をすくい上げ、上から下へスーッっと染めていきますが、これこそが熟練の職人技! 右手と左手ではもちろん、上から下まで同じ力加減で染め上げるのは想像以上に難しい作業です」(飯田さん)

柄となる部分には穴が空いており、染料を通した部分のみに色がのります。薄い色から順に染めていくのがセオリー。1色が終わったら版を洗い、次の色に移ります。

「同じ作業を繰り返し、表現したい色の数だけ捺染します。動画はサンプルを作っているときのものですが、本番では生地の無駄をなくすため、版と版の間に隙間を取らず、1つ飛ばしで染めていきます。実は、捺染台の下はヒーターになっていて、乾かしながら染めることができるんですよ。捺染台の端から端まで刷り終わったら、色ムラや版ズレがないか1枚ずつ職人の目で細かくチェックします」(飯田さん)

続いて、染色した生地を蒸し機に入れ、プリントを生地に定着させます。しっかり蒸すことで色やツヤが出て、発色がより鮮やかに。蒸した後は、洗う工程に入ります。染料と糊を混ぜた「色糊」で染めているため、生地に付着した糊と余分な染料を落とします。最後に乾燥させて、捺染完了です。

デジタルプリントでは出せない、奥深い色と繊細さ

熟練の職人の目と手により生み出されるスカーフには、機械で大量生産したスカーフにはない、温もりあふれる上質な佇まいが宿ります。

「1ミリのズレも許されない緻密な作業を迷いなく、一定のスピードで正確にやり遂げる。それは、熟練の職人にしか成し得ない技です。製版せず、デザインデータを機械で高速プリントするデジタル捺染と比べて手捺染は、生地にしっかりと染料が刷り込まれるので色合いが深く、裏面まで鮮やかな色柄を楽しめます。1回に1色ずつしか染められないため、作業に多くの時間と手間を要しますが、昔ながらの技術に誇りを持ち、実直な姿勢で取り組む職人の方々がいらっしゃるからこそ、『manipuri』のスカーフのクオリティは保たれるのです」(飯田さん)

vol.3では、上質なスカーフの証である、職人の繊細で美しい縁の仕上げについてご紹介します。どうぞ、お楽しみに。

photography&video by Hiromi Kurokawa
text by Ayako Takahashi
edit by SELEK

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