manipuri 語れるスカーフvol.3 上質なスカーフの証、繊細で美しい縁の仕上げ

manipuri マニプリ シルクスカーフ

柄のこと、色のこと、仕立てのこと。細部まで並々ならぬこだわりを持って作られたものには、誰かと話したくなるストーリーがあります。今回から3回にわたりお届けする連載「manipuri 語れるスカーフ」では、作り手の技と想いが込められた、名品スカーフができるまでを紐解きます。


manipuri マニプリ シルクスカーフ

Step1_スカーフの輪郭となる縁をヒートカットする

捺染を終えた生地は、円筒の芯に巻かれた反物の状態で再びデザイナーの元へ。イメージした色味になっているか、生地に不良箇所はないか、入念にチェックをします。 

「確認後、最終工程の縫製作業へと進みます。まずは、プリントされた断ち切り線に沿って生地を裁断。シルク専用のヒートカット機を使用し、高温のカッターで熱により生地を溶かしながら切ります。切断時に生地が溶けて再び固まるため、端がほつれず、その後の手巻き作業をスムーズに行うことができるのです」(manipuri 生産担当・飯田さん)

一見、素早く、そしてリズミカルに裁断処理を行なっているように見えますが、実はシルク生地はツルツルと滑り、真っ直ぐに裁断することが難しい素材。裁断作業にも、職人の高度な技術が求められます。 

「生地がたるまないように常に整えつつ、両手で適度な圧を加えながら生地を送っていく姿から、一瞬の気の緩みも許されない集中力が伝わります。高性能な機械であっても頼り切らず、こまめに人の目と手が加わり1つの工程が進められているのです」(飯田さん)

manipuri マニプリ シルクスカーフ

Step2_熟練の職人にしかできない伝統技「手巻き」を施す

プリント生地を裁断したら、職人の手で縁をかがっていきます。現在はミシンによる縫製品が増えていますが、「manipuri」では、1枚1枚を手縫いで仕上げる昔ながらの「手巻き」ハンドロールを行なっています。

「手巻きは『フランス巻き』とも呼ばれていて、指の腹を使い、スカーフの端を裏から表の方向にくるりと丸めながら、1針1針かがる縫い方。ソフトでふっくらとした立体的な縁は、細部までこだわった上質なスカーフの証です」(飯田さん)

丁寧な縫製で仕上げられる「manipuri」のスカーフ。緻密な作業ゆえに1日に数枚しかできないうえ、巧みな技術を要するため、手巻きをできる職人が日本には数人しかいないと言われています。

「私も実際にやってみたのですが、全然うまくできませんでした。滑りやすいシルクは、縫い目が波打ってしまい、真っ直ぐかつ均等に縫うことが本当に難しい。さらに、角を直角に縫うことは至難の業でした。非常に技術の高い仕様ですが、仕上がりの美しさは何ものにも代えがたいため、『この縁を守りたい』と使命感を持って、職人の方々にお願いしています」(飯田さん)

manipuri マニプリ シルクスカーフ

Step3_1枚1枚検品しながらアイロンをかけて仕上げる

手巻きを終えたら、ブランドネームや品質表示のタグを縫いつけます。

「本来スカーフはタグを取って使うものなので、簡易的に縫いつけています。取る前提であってもミシンを使わずに手縫いで仕上げているのは、最後の最後までブランドとしてのこだわりを貫く姿勢そのものです」(飯田さん) 

「タグを取っても『manipuri』のスカーフであることがわかるように、必ずデザインの一部として柄の中にブランド名を小さく描いているところもこだわりの1つです。ブランドネームのタグは、スカーフの鮮やかな色味が引き立つように、あえて主張が強くなく、高級感がありながらも親しみやすいブラウンカラーを採用しています」(manipuriデザイナー・仲山真木さん)

manipuri マニプリ シルクスカーフ

最後に、1枚ずつ検品しながらアイロンをかけて完了です。

「アイロンがけも手作業であるうえ、シルクはデリケートな素材。温度設定が低くても綺麗に、かつ時間をかけずスピーディーに仕上げるためには、手慣れたプレス職人が必要になります。スチームでシワをしっかりと伸ばし、手巻き部分は立体感を潰さないように注意しながら、蒸気で形を整えています」(飯田さん)

スカーフはまとう楽しさにあふれる「身近な芸術品」

手作業でしか表現できない卓越したデザイン、鮮やかな色彩、上質なディテール。作り手の技と想いを受け止める生地にもこだわりが宿ります。

「シルクのスカーフは使うほどに風合いが増して、肌に馴染んでいく変化を楽しむことができるアイテム。『manipuri』は、ヴィンテージスカーフがルーツにあるので、そのこなれたような絶妙な柔らかさを最初から表現するために、12匁の綾織シルクを使用しているのです」(飯田さん)

ヴィンテージの雰囲気を残しながらも現代的なムードを取り入れたデザインは、スカーフをより身近に感じさせ、世代を問わずにファンを増やしています。

「スカーフの真の魅力は、眺めることしかできなかったお気に入りの絵画をそのまま身に着けることができるという幸福感にあります。スカーフを絵画に見立てたとき、手巻きの縁が額縁のような役目を果たします。額縁が美しければ、絵画も引き立ちますよね」(仲山さん)

誇り高き作り手が集結し、その技術力と感性を融合させた「manipuri」のスカーフ。ヒューマンな佇まいが宿る1枚は、日常に新たな喜びと彩りをもたらしてくれるはずです。

text by Ayako Takahashi
edit by SELEK

manipuri 語れるスカーフ vol.1 
多彩なスカーフ柄を生み出すデザイナーの仕事
https://manipuri.jp/blogs/column/manipuri-vol-1

manipuri 語れるスカーフ vol.2
スカーフの鮮やかな色彩を司る、捺染職人の手腕
https://manipuri.jp/blogs/column/manipuri-vol-2