manipuri 語れるスカーフ vol.1 多彩なスカーフ柄を生み出すデザイナーの仕事

柄のこと、色のこと、仕立てのこと。細部まで並々ならぬこだわりを持って作られたものには、誰かと話したくなるストーリーがあります。今回から3回にわたりお届けする連載「manipuri 語れるスカーフ」では、作り手の技と想いが込められた、名品スカーフができるまでを紐解きます。


Step1_スカーフに落とし込むイメージ素材を集める

「manipuri」のシルクスカーフは、そのほとんどの工程がデザイナーや職人たちの手作業によって、丁寧に、そして繊細に作られています。クラシックな中にもモダンさがあって、特別感がありながらも日常にそっと寄り添ってくれる。そんな奥深く、豊かな表情を見せる「manipuri」のスカーフの要になっているのが、1シーズンで13もの柄が生み出される多種多様なデザインです。 

「シーズンテーマを設定したら、柄としてスカーフに落とし込むヴィジュアルを考えます。動画は2021年春夏の企画のときで、シーズンテーマは『旅』。これまでに訪れた旅先での経験をもとに、美術史などの本も参考にしながら、イメージを膨らませます。旅にまつわる風景やモチーフを探していく中で、異文化が交わる国境付近の街に惹きつけられました。色にあふれたロマンティックな街並みをイメージの中心に据え、その雰囲気に合った空想の建物や植物なども織り交ぜています」(manipuriデザイナー・仲山真木さん)

ヴィジュアル資料を集めると同時に、スカーフ1枚の中での構成も考えます。資料集めの段階で、スカーフ柄としての最終地点を明確に思い描いているケースもあれば、先に下絵を進め、複数のモチーフを組み合わせることで、デザイナーの予想を超えた1枚が完成することもあります。

Step2_イメージを的確に表現する手描きの下絵

スカーフ柄のベースとなる下絵を起こす作業。集めた資料や頭の中で組み立てたイメージをもとに、シャープペンで紙に描き込んでいきます。

「このスカーフをデザインする際は、13柄のコレクション全体のバランスを見渡したうえで、『ラフなタッチかつシンプルな色合いのもの』という大枠の仕上がりイメージはすでに持っていました。ですから、下描きのときから線をかっちりと引かず、ざっくりと大まかに描いています。下絵を描くときは、集めた資料や経験、記憶をもとに構成を何度も考え抜き、『manipuri』らしいエッセンスを加えるようにしています」(仲山さん)

ラフに描いているとは思えないほど、繊細な筆致の下描き。下絵にかかる時間は、その時々で異なりますが、このときは、スカーフの4隅に置く紋、つまり4枚の下絵を1日で描き上げたそうです。

「40〜70sにかけてのヨーロッパのヴィンテージスカーフの中には、有名画家による絵画がそのまま落とし込まれたものが存在します。ヴィンテージスカーフを着想源にデザインを展開する『manipuri』だからこそ、『歴史に残る巨匠たちに負けないようなクオリティの絵を描かなければいけない』という誇りとプレッシャーを常にもって仕事をしています」(仲山さん)

Step3_下絵に修正や加筆を加えながらペンで本描き

下絵が完成したら、ペンを使って本描きに入ります。下描きの上にトレーシングペーパーを敷いてペンを入れていきますが、線のすべてをそのままなぞり、清書するわけではありません。

「線を修正したり、下絵には描いていないパーツを追加したり、推敲しながら本描きしています。アイデアが浮かんだ時点で、おおよそ何色でまとめると美しいスカーフになるのかを考えていますので、デザインのあとにくる手捺染の工程を想定し、ペン画の段階から色分けして描いています。こちらの写真は、線画として表れる部分を描いているところです」(仲山さん)

パソコンでトレースするのではなく、あえて人の手で描くことで、線ひとつ取っても、それぞれ微妙に太さや長さが異なります。この手間と時間こそが、「manipuri」スカーフならではの深い味わいになるのです。

「下絵のときは、間違ったとしても簡単に消しゴムで消せますが、ペンで描くときは、一から描き直しになってしまうので、考えながら、慎重に描き進めています。手についたインクが擦れて、ほかの部分を汚さないように、小さく切ったトレーシングペーパーを右手の下に敷いて描くことも必ずしていますね」(仲山さん)

Step4_スカーフの印象を左右する大切な着色作業

デザインの中でも、色の選定は重要な要素。タッチに応じて、ペンを選びます。

「ラフな雰囲気に仕上げるために、今回は筆タイプのアルコールマーカーを使っています。筆のタッチのように、ペンの入り抜きを細くでき、グラデーションが作りやすいんです。速乾性にも優れているので、作業をスムースに進めることができます」(仲山さん)

線画に続き、紫、水色と、版の数だけトレーシングペーパーを重ね、色分けしながら描いていきます。線がズレないように、上下左右に目印をつけておくのも必ずしていることです。

「動画の要領で4枚の絵に色をつけたら、パソコンに取り込んでレイアウトを考えます。文字や線といったあしらいの部分を再び手描きし、ドッキングして、1個のファイルに組み立てていきます」(仲山さん)

こうして誕生したのが、おとぎ話の中に出てくるような街並みをラフなタッチとシンプルな色合いで表現した「ラ・ヴィレ」というスカーフです。

「お客様が手に取ったとき、魅力的に感じてもらえるように。それと同時に、描いている人の気配を消して、身に着ける人が自由に楽しんでもらえるように。そのことを心がけてデザインしています」(仲山さん)

vol.2では、スカーフの鮮やかな色彩を司る、捺染職人の手仕事についてご紹介します。どうぞ、お楽しみに。

text by Ayako Takahashi
edit by SELEK